「長く大切にされてきた建物だからこそ、その『らしさ』を未来に残したい。」
そんな想いから2025年10月にプロジェクトサニーが始動しました。
舞台は東京都目黒区。1970年に外国人向けに建設されたヴィンテージマンションです。
建物が本来もつ魅力をほどくように、1棟まるごとリノベーションをするプロジェクトです。
まず建物全体の長期的な安全性を確保するため、耐震補強工事を行う計画になっています。それから屋上防水工事と、1階エントランスおよび各階の共用部全体と空き住戸のリノベーションを予定しています。
どこか懐かしいレトロな気配、ゆったりとした佇まい。
50年以上の時を経ても失われない価値を受け継ぎ、新しい暮らしの物語が始まります。
今回は、本格的に工事が開始する前の様子をお届けします。

建物から感じるどこか懐かしい気配
まずは外観から。6階建ての白い箱のような建物は、シンプルながら細部にまでこだわりが見えます。ファサードには特徴的なモザイクタイル壁とランタン型照明、そして「SUNNY&SUNNY」のサイン。かわいらしい装飾たちが、道行く人にふと親しげな気分を呼び起こします。

続いてエントランスへ入っていくと、額縁に飾られた絵画がお出迎え。
この柔らかなタッチの絵は、オーナーのお母さまによる作品。エントランスの1枚だけでなく、マンション内のあちらこちらに世界各地の風景が飾られておりまるで美術館のようです。

1階エントランス/before
建物らしさを価値として受け継ぐ
この物件は50年以上前に建てられたにも関わらずなんと外国人をターゲットにしており、今でもその名残がたくさん残っています。
例えばゆったりとしたつくり。賃貸マンションとしては珍しく、1階住戸以外は90㎡以上ながら2~3LDKの間取りです。さらに玄関のたたき(靴を脱ぐ場所)がなく靴のまま生活できるスタイルも、まさに外国人仕様といえる部分です。

6階居室/before LDK(1枚目)浴室(2枚目)
特徴的なファサードの装飾、丁寧に飾られた絵画、手に馴染むほど使い込まれた手すり、先代が鎌倉から持ってきたというこだわりの石畳、そして井戸のある小さなお庭まで。
マンションのあちこちで見つける「らしさ」が、不思議な懐かしさと親しみを与えてくれます。住んだことがない人でさえ、どこか愛着を覚えてしまう魅力がここには宿っています。

階段室(1枚目)玄関脇のお庭(2枚目)
一方で街を見渡すと、賃貸マンションはどこも似たようなつくりになりつつあります。
最大収益を得やすい「定番のつくり」があるため、どうしても同じ方向の計画が増えていくのが現状です。
そんな中でこの物件が持つ「建物らしさ」は、これからますます貴重になっていくことでしょう。ここに漂う懐かしさや温もりのようなものは、住む方にとってきっと代えがたい価値になっていくはずです。
今回のプロジェクトではこうした「建物らしさ」そのものを価値と捉え、プロデュース・施工・管理で未来へ繋いでいきます。
安全で快適に暮らせるよう整えつつ、すべてを取り替えるのではなくアイデンティティを受け継ぐ。ここにあるものを大切にしながら、次の章をともに築いていきます。
これからプロジェクトサニーの進捗を継続的にお届けしていきます。
ただ工事の様子を追うだけでなく、古いRC造を次の世代につなぐには何が必要なのか?といったこの建物ならではの背景や判断の理由を紐解いていきます。
間取りや内装が少しずつ形になっていく様子
耐震補強でこれからの10年、20年、さらに先をどうつくるのか
古い建物を活かすうえで避けて通れないお金の話。
このプロジェクトを追っていくことで、「建物の価値を引き継ぐ」とは何かを、一緒に発見していただけるはずです。
記事は今後も順次公開してまいりますので、ぜひ続編もお楽しみにお待ちください。