建築家さまより
築32年、明治大学と隣接するマンションの住戸改修。
既存の間取りは、90年代に大量供給された分譲マンションの典型的な田の字プラン。
北側の外廊下から玄関に入り、居室に挟まれた中廊下を抜けた先に南向きの居間を有する。
均一化され、誰しもが体験しているであろう住戸形式を、独創性のある空間にすることがクライアントの一つの要望だった。
解体時、床は躯体に直張りであることが判明した。
各水回り配管のため床を上げることで、住戸の東西にレベル差が生まれる。
半分の高いレベルでは、料理、食事、入浴などの営みを。
半分の低いレベルは、睡眠や団欒のくつろぎの空間とした。
2つのレベルで異なる仕上げを用い、それらを回遊動線で繋ぐ。
もう一つの要望は、旅行したNYやLAで感じた空気感を日常の中でも味わって生活したい、
William Eggleston(1939-)の写真のような古き良きアメリカと、現代性を兼ねることはできないかという問いだった。
65年、モノクロ写真こそがアートとされていた時代、Eggleston は ” New Color ” と呼ばれる活動を始める。
76年、MOMAでの個展を成功させ、カラー写真を芸術の域に押し上げた。
彼の日常を切り取った写真には、美しい赤が度々写し出される。
時間が積層されたような、くすんだ赤、その色を取り込みたいと思った。
ラーチ材のベンチとDJブース、モルタルのキッチン、シルバーの壁、緑、ピンク、赤、、、
日々の暮らしの中で、2つのレベルを行ったり来たり、様々な場をぐるりと回ることで多様性のある豊かな生活体験ができると考えた。
新しい暮らしが、映像クリエイターであるクライアントの創作に少しでも貢献できれば嬉しい。