建築家さまより
閑静な住宅地に建つマンションの住戸改修である。周囲には戸建て住宅や街路樹の緑が点在し、穏やかな空気が流れている。
既存の住戸は、機能ごとに細かく区切られた典型的なマンションの間取りで構成され、角部屋のメリットが十分に享受されておらず、空気の流れや空間的な広がりも乏しく、やや籠った印象であった。
今回の改修では既存の個室配置を踏襲しつつ、LDKにのびやかな広がりをつくり、角部屋の特性を享受できるようにプランや素材を整理した。また、住まいの中心となるLDKと各部屋をゆるやかにつなぎ直し、光や風、視線が通る奥行きを感じられる構成とした。
内部の仕上げはタイルとポーターズペイントを採用し、基調とした柔らかなベージュで全体を包んだ。光の当たり方によって微妙に表情を変えるその質感は、空間に穏やかな陰影と深みをつくりだしている。家具や造作も過度に主張することなく、床や壁の色調と呼応するように整え、空間全体が穏やかに調和するように心がけた。
均質化、規格化されたマンション内部に、手仕事の柔らかな肌理を重ね、空間に静かな温度と揺らぎを与えた。余白を大切にした設えは、暮らしの変化を受け止めながら時間を纏い、ゆるやかに表情を深めていくことを意図している。
NENGO工務店より
■土地の読み込み
街を歩いていても分かりますが、大倉山は実は建築家と縁の深い街です。妹島和世による「大倉山集合住宅」、長野宇平治が設計したギリシャ・ローマ風建築の「大倉山記念館」。隈研吾もこの街で生まれ育ち、その空気感が建築家としての原風景の一つになったと語っています。毛利建築設計事務所による「大倉山ヒルタウン」もあり、建築文化の積み重なりを感じられる街です。
そんな建築家と縁の深い街にこれから住むお客さまが街と住まいに愛着を持って暮らしていただけるよう、細部にこだわり丁寧に形にしました。暮らし始めてからも嬉しい発見のある空間になればと考えています。
■施工のこだわり
・大判タイルは実寸大のサンプルを作成し、実際の納まりを検証しながら割付を決定
・突板はみんなで突板屋さんまで足を運び、約半日かけて納得のいくものを選定
・Rの巾木はスチール+焼き付け塗装で自然な仕上がりに
・洗面台・キッチンはシールが出てこないように入り目地で処理
・入り巾木は角のチリを残すため、コーナー見切りをあらかじめ仕込む