「築55年でも建て替えない」自由が丘の賃貸マンション1棟まるごとリノベーションの3つの可能性
2026.06.19

「築55年でも建て替えない」自由が丘の賃貸マンション1棟まるごとリノベーションの3つの可能性

PROJECT

2026年5月・6月にわたり、自由が丘の賃貸マンション「サニーアンドサニー」で見学会を開催しました。ご参加いただいたのは、オーナー、設計者、同業他社まで、さまざまな立場の方々。工事中の現場と、完成した住戸の両方を同時に見られるという、なかなかない機会です。

参加者から届いた声をもとに、この見学会で見えてきたことを3つにまとめました。


① 「住みながら工事ができる」—入居者への負担を最小限に抑えながら前に進む

参加者から最も多かった反応が、これでした。

「入居者に出ていってもらわずに耐震改修ができるとは思っていなかった」

サニーアンドサニーは築55年、RC造6階建て全11戸の賃貸マンションです。11年前にも耐震改修を試みましたが、当時は1階の駐車場部分のみ補強が完了し、2階以上は技術的・入居者対応の壁から着手を断念した経緯がありました。

その後、耐震基準の考え方が更新されました。今回採用したのは、建物の外側にSRCのフレームを設置する工法。これにより、入居者が住み続けたままの状態で、耐震補強工事を実施することが可能になりました。

工事期間中、入居者にはバルコニーの撤去・養生・騒音など、相当なご不便をおかけしました。それでも退去を求めるよりはるかにリスクが低く、かつ工事期間もはるかにオンスケジュールで進められる選択になりました。しかも耐震性能が上がることは、入居者にとっても歓迎すべきことです。工事に理解を示してくれた既存入居者の存在が、このプロジェクトを支えてもいます。

「古い建物だから耐震が心配だが、毎月の家賃収入を維持しながら耐震改修を進められるなら、安心できる」というオーナーの本音を伺うことができました。


② 1970年代の建築にしか出せない、デザインの強みがあった

見学のハイライトのひとつが、改修済み住戸(602号室)の内覧でした。

87㎡の広さ、2LDKのゆったりとした間取りは、もともとこの建物が外国人向け住居として建てられたことに由来します。玄関を入るとSOHO利用にも便利そうなスペースが広がり、奥へ進むとLDKへ。そこから先の廊下は黒く塗装し、各居室の白い空間と色の対比が印象的なデザインとしました。

「ギャップ」—これは、NENGOと意匠設計協力の吉原環建築設計が一緒に組み立てたこのプロジェクトのコンセプトです。半世紀を生きた建築と新たな耐震補強フレームという否応なしに生じる違いを無理に隠すのではなく、しっかりとギャップとしてデザインに落とし込むこと、それを自由が丘という場所が持つ二面性や共用部、白と黒の専有部と、建物全体のデザイン言語として行き渡らせました。

602号室、見た目の印象は一新しているにも関わらず、実は間取りをほとんど変えていないのも特徴です。参加者からも「え、いじってないんですか」という声が上がっていました。1970年代ならではのおおらかな間取りを活かしつつ、洗練されたデザインで仕上げ、賃料は既存の約1.5倍を目指せる水準に。「周辺相場を考えると、むしろ安いくらいかもしれない」という参加者の言葉が印象的でした。

外に見えるバルコニーの手すりは、当初のものをそのまま活かしています。今どきのアルミ製品にはない趣があります。おおらかなつくりも併せて「先代オーナーの想いが引き継がれているのがよくわかった」という声をいただきました。


③ お金と将来計画の相談まで、まとめてできる安心感

「融資や助成金のことも相談できるのはありがたい。そこが見えないと進めるにも進めない」

そう話してくれた参加者は、自分の物件をどこから手をつければいいかわからないという状態でした。

今回のプロジェクトでも、資金調達は大きな壁でした。法定耐用年数を超えた物件ということで、メガバンクに相談する限りは「改修ではなく建て替え」の一択しかない状況でした。建て替えとなれば入居者への退去交渉から始まり、費用は少なくとも10億円を超える規模になります。それは今のオーナーにはあまり現実的な選択肢ではありませんでした。

最終的には信用金庫から長期間の融資を受けることができ、工事がスタート。建て替えよりもはるかに抑えられた費用で、耐震・断熱改修、外装、防水、エントランス他共用部、空住戸のリノベーションを実施することができました。

「どこに相談していいかわからない」という段階から伴走できること。現在入居済みの住戸については今後の入れ替わりのタイミングで順次改修し、10年後に全戸完成を目指す長期計画であること。こうした話に、参加者から「未来のことも一緒に考えられるのは嬉しい」というお話も受けました。


「築年数は、条件ではなく素材だ」

見学会の終わりに、ある参加者がこんな言葉を残してくれました。

建て替えを勧めてくる事業者、古いからと安く貸し続けてきた慣習、退去交渉のリスク——そういった”前提”を、現場で一度疑ってみること。それがこの見学会の、いちばんの収穫だったかもしれません。

1棟まるごとリノベーションについてのご相談は、NENGOまでお気軽にどうぞ。

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