【目黒区 Y邸】
~物件探しからリノベーションまでをお手伝いした事例です~
ー風と水ー
目黒川沿いに建つこの共同住宅は、比熱の高い川(目黒川)から吹く川風によって、
心地よい微風が常に室内を流れていきます。
びゅんびゅん吹く風ではなく、頬を撫でる様な類のその風は、
休日のティーブレイクのシーンに良く似合い、川沿いに住む事の豊かさを感じさせてくれます。
この家の、常に誰かしらが訪ねてきているような印象は、
桜の季節に花見の特等席となる立地性ももちろん影響していると思われますが、
もう少し普遍的な「居心地の良さ」によるものという気がします。
強すぎない心地よい風をはじめ、室内に目を向けると、
木・塗装・畳といった誰もが心休まる要素が散りばめられています。
ー兼ねる・繋がるー
心地よい南側の空間に、「パイプスペース」と呼ばれるタワー状の箱があります。
上下階の皆が使っているもので、不要だから壊すという訳にはいきません。
物件によって様々な箇所にあるこのパイプスペースは、言ってしまえば個体差のある「特徴」。
何でこんなところに…と嘆くのではなく、特徴は特徴として活かしてあげる事が必要なのです。
今回は、このタワーをシンボル的に空間のコアに配置し、
その周囲360度の内3/4をパブリック(リビングダイニング)空間として利用。
残り1/4を小上がり空間として、来客時は旅館のように、春にはそこから夜桜を楽しめる仕様にしました。
畳は、最近とても減ってきていますが、実はとても気持ちのいい建材。
温泉旅館の畳の上で、「あぁ、気持ち良い」ってゴロゴロする事、実はありませんか?
この空間でも全く同じです。
イスで過ごす事も可能ですが、お酒が少し強く入ってきた時間帯にはちょっと体を横にしたい。
そんな人間の摂理的な現象を、優しく受け止めてくれる構成です。