武笠陽一

「バブル後期の建物がこの先何十年と残ってたらかっこいい」
父の建てたビルを建替えではなく、そう考えるようになったきっかけとは

INTERVIEW / 01
MSBビルオーナー兼坂戸屋店主武笠陽一さん

創業1902年、
100年以上続く溝の口の地酒専門店の
4代目から5代目に継承されたビルのゆくえ

溝の口駅から徒歩2分、地域に根付く築28年の建物MSBビル。建物のオーナー兼、一階にある創業120年の老舗地酒専門店「坂戸屋」店主もつとめる武笠さんに、お話を伺いました。
ご自身が幼い頃は、土蔵を改築した住居件店舗だったこの場所に、お父様である4代目が1993年に建てたビルとのこと。

2021年に、約半年をかけてNENGOが大規模修繕工事をさせていただきました。
その後は賃貸管理のお手伝いをしており、今後は断熱工事も予定しています。

このビルはお父様の代に建てられたこと、どういう経緯があったのでしょうか?

当時、サザエさんの三河屋さんのような商売を中心にやっていたのですが、これからの時代はなかなかそれだけでは大変だろうと。また時代がバブルということもあり、
テナントからの家賃収入も得られるビルという形で、事業計画をしました。
その後1993年に完成したのですが、そのときはもうバブルが弾けたあとでしたね。笑
見込んだ家賃収入も、利回りが悪くなったりして大変だったそうです。

武笠さんは社会人1年目からこの家業に?

新卒ではビール会社に就職していました。
その後22年前にこの有限会社坂戸屋商店に入社して現在に至りますね。

ご自身が入社されて、またご自身が代表に就任されてから、方針転換なさったことや、大切にされていることはありますか?

「三河屋さんのような」と表現した、父の商売は言うなれば少し保守的だったので、自分は「攻め」の姿勢を持ちたいと考えて、さまざまな地方の地酒なども扱うようになりました。
お酒の作り手が持っている言語、思いを、翻訳する立場のようだと考えています。
飲食店に対しては、そのお店の料理に対して、
ぴたっとはまるペアリングを提案できないといけないと考えていて、
作る人と味わう人の両方の言語を理解し、その出会いをお手伝いしたいと思っています。

そんな武笠さんは、現在51歳。
このビルを将来どうしようかと、考えるようになるきっかけがなにかあったのですか?

老朽化のことなどもあり、顧問の税理士さんらとも30年経つ前には、
まず修繕は必要だろうという会話はしていました。
家業のビルと言えど、父が建てたこのビルに、
もともとはそこまでの思い入れがあったわけではなかったかもしれません。

そのときにNENGOへお問い合わせをくださったというわけではなく、弊社社長ともともとお知り合いだったとか?

そうですね、的場社長とは工事の5.6年前からのお付き合いで、
もともとは浅草の料理道具問屋の社長さんが共通の知り合いで。
同じ溝の口にこんなことやってる人がいるよと。
聞くと、二子玉川の行きつけのお寿司屋さんも一緒だったり笑

そのうちにこのビルのことも会話するようになりました。
的場さんとも、知り合ったのは大人になってからですが、
言わばこの溝の口が共通の「地元」ということになりますよね。

大山街道沿いの商売をやっていたお家が、気づけばコンビニに変わっていたり、お店があった場所が駐車場になっていたりと、
やっぱりそういう景色を見ると寂しさがあって、
そういう根っこの部分が的場さんと一致したというのもあるんだと思います。

「このビルをどうしていきたいか」を一緒に考えてくださって、
まわりは商売をやめてしまっても、うちのこれからの生き残り方ってあるよなあと、そんな会話もした覚えがあります。

なるほど、経緯として、
そういった的場との知り合い期間から、自然と弊社で修繕工事を担当させていただくことになったのですね。

他社さんとも相見積もりはとらせていただきましたよ。
でも、NENGOさんはお見積りが出てくるまでが早かったですね!
もともとお付き合いのあった地元の工務店さんもあったのですが、
そういう思いの部分とか、誠実さとかも感じていましたし、
なにより「このビルをどうしていきたいか」を一緒に考えてくれる姿勢に、
やっぱり、長い目で見た街づくりをされている会社さんだなあと感じましたね。

嬉しいお言葉までありがとうございます!
では、そうして決めてくださってからはスムーズそうですね

実は最初は心配もありました。笑
集まったこの修繕工事のメンバーに若い人が多かったこともあって。
依頼する前に、正直ネットとかで評判とか見るじゃないですか。
中にはネガティブな内容もなくはなかったこともあったりして。

ご心配をおかけしてしまい、失礼しました。。!
それでも引き続きご依頼してくださったのですね。

でもすぐにその心配は、やってくうちに消えました。
みなさん一生懸命ですし、意思疎通もしやすかったですね。
口コミのことも全く気にならなくなりましたね。
ああ、悪い側面をたまたま書かれてしまったのかな?くらいに。
むしろ、チームメンバーのみなさんとやってくうちに、
あの書かれてる口コミ、変えてやりましょう!って思うようになるくらいでしたね。

そのようなことが。。ありがとうございます!
信頼を深めてくださった経緯としては、特にメンバーたちのどのようなところから?

やるべきこと、やらなくていいことを、本当に正直にはっきり示してくれるところですね。うちのもともとお付き合いのある電気屋さんともうまくタッグを組んでくれましたし。
総工費も、最終的にそれで20%ダウンくらいしたんです。
たとえば、うちの正面の看板も取っ替えましょうと話していたんですけど、見ていただいたら、これちょっとここを直せばまだ使えますよ!って言って。
そうしてみなさんとやってくうちに
気づいたらこのビルにとても愛着や思い入れが湧いていましたね。

あまり思い入れがなかったかもとおっしゃっていましたものね。

そうですね。
最初、的場さんが「バブル後半の建物がここからあと100年残ったらかっこいいじゃないですか!」 って言ったのも、実はいまいちピンときてなかったんですよ。

でも、NENGOさんが川崎の日進町で手がけられたunicoを見せていただいて、
腹落ちするものがありました。
ただ新しいだけがいいわけではなくて、
長い目で見て、自分が生きていないあとのことまで、
長い目で見て損をしない不動産との付き合い方、
そういうことをNENGOさんは伝えてくれて、やってくれたんだなと、
いまではあのときの言葉がしっくりきますね。

今も主に賃貸管理という形でお手伝いをさせていただいていますが、なにか改善してほしいことや、ここは助かってるよとか、ありますか?

断熱工事や内装工事、いろんなチームが社内にいらっしゃるおかげか、
たとえば、賃貸管理の担当者さんに伝えたら、それを社内で連携、アクションしてくださるスピード感はほんとに助かりますね。
現状に対して、私が気づいていないことにまで提言してくださったり、
故障かな?と思って買い替えようとしているものも、
見に来てくださって、簡単な修理で大丈夫だと。
ほんとに無駄な提案をしてこられないという安心感がありますね。
だからこそ、賃貸管理の担当者さんに何でも言います笑
最適解を出してくれるという信頼がありますね。

最後に地元溝の口の好きなところを教えてください!

ハイソな二子玉川とたまプラーザに挟まれて、
いつまでも庶民的なところですかね。笑