神奈川県三浦郡葉山町に残る別荘建築群は、
日本においても非常に価値のある貴重な建築財産(=歴史的建造物)ですが、
時代の変遷に伴って、ここでもスクラップアンドビルドが多発しております。
建築的な価値は認めながらも、築後相当年数を超える物件では相続時に継承がうまく進まずに、
売却・分割販売されてしまうケースが多々あります。
その行く末が建売り戸建てとなるケースが多く、街の景観などに大きな影響を与えます。
加地邸は、巨匠フランク・ロイド・ライトの薫陶を受けた愛弟子・遠藤新が1928年
師の意匠を色濃く反映させて設計した建物で、継承時の築年数は91年。
2020年、改修を経て宿泊やウエディングも開催できる民泊施設【葉山加地邸】として生まれ変わり
登録有形文化財の指定を受けました。
また2021年度には今後の有形文化財建築の活用の好例として評価され、グッドデザイン賞も受賞しています。
日本では減価償却という考え方に基づいて、居住用木造建物の耐用年数が22年と設定されております。
市場に流通している居住用建築物の中で、
この耐用年数(工法により耐用年数は異なります)を超えている物件は価値がないと判断され、
建物分の価値はゼロとして流通している現状があります。
ですが、希代の建築家によって大切に設計・建築された建物は時代を超えて愛されており、
その価値は単純な税法上の数字では図れない側面があります。
こういった物件を次世代の有志に継承し、多くの方にその建築的価値に触れていただくことで、
建築に対してのリテラシー向上を図ることも、副次的な効果としてあると考えております。