丘の中腹にある古びた、小さなマンション。意外と端正な構えをしている。
最上階には、鍵のかかったとても広々とした屋上があり、そこからは街を一望できそうだ。
でもこの眺めはいったい、誰のためのものだろう。
賃貸マンションの最上階を居住者が自由に使えるキッチンルームへと改修した。
床面積が約30㎡と小さく、4面採光の部屋であったため、間仕切り壁、キッチン、家具を別々に考えるのではなく、4×8(1220mm×2430mm)サイズの合板を用いて、シンクとコンロのある大きなテーブルと、フルハイトのリブ付きの壁だけで空間を分節した。大きなテーブルは、居住者同士の距離を適度に保つバッファーになることもあれば、テーブルを囲んで食事をする時のように、互いの距離を縮めるインターフェイスにもなる。賃貸であることの特性を生かし、将来的には一定のルールの下で地域に開放できるようになれば、商業施設や公共施設とも異なる、第3のまちの居場所として活用することができるのではないかと期待している。
(新建築2017年8月号掲載_mh)