1棟まるごとリノベーションの現場では、図面や完成イメージだけでは語れない出来事が日々起きています。
図面と現状が異なる。予想通り解体できない。そもそも元の図面がない。
築古リノベーションを扱う私たちにとって、こうした“想定外”はむしろ前提ともいえます。
だからこそ重要になるのが、工事中に重ねられる「確認」と「判断」です。その一つひとつの積み重ねこそが、新築と異なるリノベーションのポイントです。
本記事では、現在進行中の「プロジェクトサニー」の現場の様子をお伝えします。建て替えではなくリノベーションを選んだ賃貸マンションで何が起き、どのような判断がされているのかご紹介します。
解体とは建物の現在地を知ること
現在のプロジェクトサニーは、バリューアップのため耐震補強・修繕・内装工事が同時並行で進んでいます。
耐震補強部分に干渉してしまうバルコニーの再編や、一部増築されていた部分を撤去するなど、部分的な解体がほぼ完了しました。外部の工事は折り返しに差し掛かり、空き住戸の内装工事は仕上げが始まっています。
リノベーションは、解体後に初めて明らかになる部分も少なくありません。そのため解体は単に壊す工程ではなく、建物の状態を確認する工程として重要なのです。

解体工事後の設計者による検査の様子
解体してから、適切な工法を判断する
解体後の現場では、図面だけでは分からない状態を確認しながら、適切な施工方法を判断します。
一例として、仕上げ工事の判断についてご紹介。
この日は、共用部の壁紙剥がし作業に立ち会いました。ビニールクロスを除去し、塗装で仕上げる計画です。
壁紙をきれいに剥がせるかどうかで塗装の方法は大きく変わります。タンスにこびりついたシールをきれいに剥がせないように、壁紙も完全に剥がせないことがあります。
・ビニール製の表面も剥がれないのか
・紙製の裏紙だけ剥がれないのか
・何割ぐらい残ってしまうのか
これらの状況によって、塗装する方法が変わってきます。

壁紙剥がし後の下塗りテストの様子(共用部:階段室)
いよいよ剥がしてみると、ほとんど裏紙が残る状態。そこから下した判断は「残った裏紙の上から塗装の下塗り(シーラー)をする」でした。
選択肢は他にもありました。上から下地のボードを増し張りすることや、専用剤を使い裏紙を完全に剥がすことも可能です。しかし、現状・時間・予算などのバランスに鑑みた判断をしています。
一見小さな判断のようですが、1棟リノベーションでは細やかな判断が工事の質に影響します。課題があっても品質を保ちながら、工期を遅らせない。現場では常にオーナーの経営目線に立った選択が求められます。
一筋縄では行かない中で、必要なことを考える
プロジェクトサニーを進めるNENGO濱口に話を聞きました。
Q.リノベーションの現場で、最も意識していることは何ですか?
調整が必要な場面で、重要か否かを見極めることです。
リノベーションでは工事中に必ず想定外のこと、要は予定と違う状況が起こります。「このまま進んでも問題ないのか」「別の方法で対応するのか」「やり直すかどうか」状況から判断する必要があります。
やり直したり手をかけることは可能ですが、当然追加でお金も時間もかかります。
だからこそ、「この建物にとって本当に重要な部分はどこか」を基準に、工事の手戻りを最小限に抑えつつ、優先順位を整理しています。リノベーションにおいて重要なのは、建物ごとの特性を理解し、優先順位を見極めることです。

想定外を把握し、管理する
Q. 現場での“想定外”にはどのように向き合っていますか?
工事に想定外はつきものです。重要なのは想定外をゼロにすることではなく、適切に管理することです。今回の現場でも、在来浴室からの漏水が確認されました。
まずは原因特定から始めました。水道管からの漏水ではなく浴室下部に溜まっていた水が一部流れ出してしまったことが分かり、状況を確認したうえで速やかに水を取り除く作業を行いました。
ユニットバスではなくタイルで仕上げられた、古い建物ならではの在来浴室では起こりやすい事象です。これまでの経験と知識があったことで、落ち着いて対応できました。
下階の入居者さまには突然の水漏れでご不安な思いをおかけしましたが、古い建物に対してご理解があり、冷静にご対応いただきました。現場としても大変ありがたく感じています。
想定外の出来事に対しても状況を整理し、関係者の皆さまにご理解をいただきながら適切に管理していくこと。その積み重ねが、オーナーさまとの信頼関係を築く基盤になります。

浴室の解体中
建物らしさを保ちながら、次に引き継ぐ
Q.最後に、プロジェクトサニーの今後の工事計画と注目ポイントについて教えてください。
プロジェクトサニーはまもなく1住戸の内装工事が完了し、入居者募集と内覧会を開催する予定です。共用部は一新、外構部分も耐震補強に加え外壁塗装が進んでおり、内外観ともに進化した次の時代への準備が進んでいます。
既存部分と調和する細かな建材の使い方に注目です。建物がどのように表情を変えていくのか。そしてこの建物がどのような入居者に選ばれる存在になるのか、ご注目ください。

1枚目:エントランスのパース 共用部は既存タイルの壁と調和させながら一新(作成:吉原環建築設計)
2枚目:耐震補強工事の様子 既存躯体をはつり、鉄筋を埋め込むことで増築部分と一体化させる
まとめ:1棟まるごとリノベーションは工事中の判断が重要
「想定通りでない範囲はどこなのか」「目指す姿とコストのバランスを保てるか」こうした不確実さのなかで工事を進めるリノベーションでは、新築にはない判断が必要です。
プロジェクトサニーでは一つひとつの工程を「壊す」「つくる」ではなく、建物に合わせて不動産価値を最大化するプロセスとして進めています。これまで築古の物件再生をお手伝いしてきたNENGOだからこそ得意とする分野です。
完成までの道のりもまた、価値の一部。引き続き進捗をお届けしていきます。

1枚目:既存外壁の劣化状況を確認している様子
2枚目:採用予定のポーターズペイントの色を、設計者と決めている様子
これまでの記事はこちらをご覧ください。
>>建物の「らしさ」を未来につなぐ プロジェクトサニーが始動しました
https://nengo.jp/news/2025/12/project-sunny-01/
>>耐震補強からはじまるリノベーション プロジェクトサニー#2
https://nengo.jp/news/2026/02/project-sunny-02/