【渋谷区 M邸】
~物件探しからリノベーションまでをお手伝いした事例です~
ー「歴史を紡ぐ」ということー
ヴィンテージとは単にヴィジュアルに優れた建物ではなく、歴史を紡ぐ事である。
このお宅にお邪魔すると、ついついそう感じてしまいます。
建物としての存在感、重厚感が圧倒的で、息を飲んでしまいます。
共用部分に入ることすら少し臆してしまうほどのその佇まいは、
表面的な「オートロック付き」物件とは比較にならない程の安全性を感じます。
管理状態の良さは一目瞭然、築32年という年輪が気持ちよく刻み込まれています。
大切に大切に住み継いで来られた建物です。
ーデュアル・メインルームという考え方ー
空間としては、構造として計算されている壁がいくつかあり、可変性が低い状態でした。
当初配置されていた寝室の間の壁は壊せるものの、キッチンとリビングの間にも壊せない壁があり、
一体感を持たせる事が少し困難ではないかという議論になりました。
そこで全体を二つの大きな空間と仮定したところ、
ホテルのスイートルームのような、書斎とベッドスペースが同一空間にある構成が
お施主さまのライフスタイルにとてもしっくりきました。
日本の新築文化の基本形は、「いかに細切れ空間を多くつくるか」という考え方。
今回の家はその逆を突き進み、要素を分解しすぎず、緩やかな関わりを持ちながら
「プライベート」と「パブリック」のみに分類しています。
壁に使用している塗料は、プラスター・オブ・パリス(パリの石灰)。
見る角度により濃淡が変わる、世界に二つとして同じものが存在しない壁からは、
表情豊かな美しさがよく分かります。
窓先に佇む植栽の緑陰とも相性が非常に良く、
それぞれの要素が相乗効果を生み出すヴィンテージマンションとなっています。