川崎市 S邸「暗い家」
~物件探しからリノベーションまでをお手伝いした事例です~
この家のオーナーは、物件探しの当初、仕事の関係で横浜市内に新居を構えることを検討していました。しかし何軒か内見するにつれ、このエリアではなかなか希望の物件に出会えないもどかしさを感じていました。
そこで、横浜市内を希望している理由を、仕事以外でも様々ほり下げて話し合ってみた結果、その希望は川崎市内でも叶えられるとの結論に至り、それまで全く検討もしていなかったエリアである、読売ランド前の物件を内見することにしました。 読売ランド前のマンションは、10階建てにも関わらずエレベータがなく、 また階段が急な為に、なかなか大変な思いをして家までたどり着くことになります。
ですが、そのしんどさは室内に入った瞬間に、達成感へと変換されます。
山肌沿いに建てられたこのマンションは、1階上がるたびに山を1合登ったかのような景色の違いを味わえます。
ここは7階なので、窓の向こうの景色は緑と空しか無く、 とても新宿まで25分とは思えない、ビオトープな環境が広がっていました。
南北はつながりを重視した空間に。
そして東西は壁式工法の特徴を生かして壁を残しながら、 時間や気分によって使い方を変えられる2つのパブリック空間の構成としました。南北のつながりは、壁で仕切るのでは無く高低差にて空間の性格を変えられるように、 坪庭の前を小上がりの畳とし、坪庭を見ながら酒をたしなめたり、 文机を置いて書き物をしたり、ゲストが来た時には布団を敷くこともできる、多目的な空間としました。
また、この家の壁面には白が使われていません。色の組み合わせとグラデーションと陰影で、空間にメリハリと艶を出しています。 最もパブリック性が強い空間は、一面にトイソルジャーというかなり濃いめの色を塗っています。
朝は紫陽花を超えて入ってくる朝日が木漏れ日のように美しく、 夜はしっとり落ち着いた、大人な空間になる二面性を持っています。 バルコニーに接したセカンドリビング空間は、シェルグレイという少し青みがかったグレイと、 ファブリックの紺、それに家具のラワン色が絶妙なバランスで配されています。