横浜紅葉坂の角地に立つテナントビルの2階にある鍼灸接骨院。
2階でありながら坂を登る人と接骨院で働く人のアイレベルが一致するところに
大きな開口部があります。
その開口部越しに院内の様子がわかることで、オフィス街で働く人や家路に帰る人が立ち寄りやすい、
体と心をリセットできるあたたかい鍼灸接骨院を目指しました。
既存の空間の容積を最大限に利用する発想から生まれた3つのレベル差により
開放性や紅葉坂への視線の抜けを確保する一方で、
2段下がった場所は少し落ち着く待合コーナーや施術コーナーになっています。
小さな段差は働く人が時折、腰掛ける場所にもなっています。
鍼灸接骨院というと一般的にカーテンで覆われたやや窮屈なイメージがありますが
受付カウンターを中心に回遊性のある動線とし、
カーテンを開け放てば大きな広場のようなひとつながりの場所となります。
施術だけでなく、講習会や勉強会等で人が集まることができる場所になったり、
長時間施術を行う働く人にとっても心地よい場所となることを大切にしました。
鍼灸接骨院の受付カウンターは紅葉坂を行き交う人のアイキャッチでもあり、
室内では海のような青緑がカーテンや家具に淡く色を移し、時間帯によって様々な表情を見せます。
現役美大生による番号札の色彩計画やグラフィックを学ぶ学生のロゴマーク、
サインも採用され、設計、施工はもちろんのこと、
様々な領域を超えた協働作業が発生することでこれからの鍼灸接骨院のあり方を模索しました。
(奥沢空間研究所 工藤良子)