海を彩る潮風、空の色、波間に踊るやわらかな光がある神秘の島、隠岐西ノ島。
その高台にそびえる宿、国賀荘の特別室「ヂナカチ」。
「ヂナカチ」とは北前船が帆を休める港として隠岐が栄えた時代より伝わるこの地独特の風の名称です。
ポーターズペイントは島の風土と国賀荘が持つ歴史に調和できるよう、隠岐産無垢スギ材の風合いと国賀荘が持つ懐かしさを感じさせてくれる絶妙な色味を導き出し、施工させていただきました。
設計コンセプト
ー あまね設計建築事務所様より
国賀荘211 号室『ヂナカチ』
荒々しい大断崖のそそり立つ国賀海岸。その海面より上方257m の高さに牛馬が悠々と暮らすカルデラ地形の山並みがある。
山は放っておけば森林に覆われて風景として閉じたものになるが、牛馬を放牧することで草木が高木にならず、傾斜地が多年生植物の草原のままで居続けている。自然の地殻変動によって出来たものと人が介在して開いた景色が相まって独特の壮観を呈しているのである。
人間がほんの少しだけ介入することで景色を開き、その価値を可視化する。人がその視点場を与える。このことは根源的な建築の在り方そのものと酷似している。
高台に立つ国賀荘からの絶景はそれを雄弁に語っているように思える。その中でも、島前の内海がパノラマに拡がり、港への入り風が抜ける東南角の 211 号室は視点場としての潜在価値が高い。
私たちはこの価値を最大化し、島の風土・歴史を見つめる場として整える計画を行った。横長の景色は日の出から日の入りまで刻一刻と違う情景を魅せてくれる。窓枠を消し、ベッドを床レベルより1メートルほど高く設定することでこのスペクタクルを一日中楽しめるものとした。また、通風可能な窓を南北に適宜配し、幾つかの風の通り抜けを確保した。素朴なラタン張りの建具は日射を適度に和らげつつ、見えない風を可視化し、清涼感を与えてくれる。
既存建物の実直な構造体はそのままに、室内の装飾を控えめにしながらもディテールをしっかりとつくり込むことで、国賀荘の履歴との調和をとるよう配慮している。
木部の塗装においても、隠岐産無垢スギ材の風合いと国賀荘が持つ懐かしさを感じさせてくれる絶妙な調色配合を何度も何度も試作を繰り返し丁寧に探した。
『ヂナカチ』とは北前船が帆を休める港として隠岐が栄えた時代より伝わるこの地独特の風の名称である。国賀荘の位置する浦郷ではこの方向の風が港への入れ風でもあり、長い航海に疲れた船を迎え入れる風である。
この場所にいつまでも穏やかな時間が流れ、旅人の癒しとなり続けることを願うばかりである。