「築古=建て替え」の常識を問い直す。築56年賃貸マンションが選んだ再生という道<br>プロジェクトサニー#5
2026.07.21

「築古=建て替え」の常識を問い直す。築56年賃貸マンションが選んだ再生という道
プロジェクトサニー#5

PROJECT

築56年の賃貸マンションを1棟まるごとリノベーションする「プロジェクトサニー」。耐震補強工事を要に、外壁修繕・屋上防水・屋上倉庫撤去・共用部バリューアップ・住戸リノベーションを進めています。

2025年10月の着工から約8か月、最上階住戸のリノベーションがついに完成しました。

築年数を重ねた賃貸マンションでは、設備更新だけでは差別化が難しくなることがあります。一方で、長年受け継がれてきた建物ならではの魅力や個性も存在します。

今回は広さや間取りといった既存の特徴を活かしながら、現代の暮らしに合わせて更新した最上階住戸のBefore / Afterをご紹介します。

築56年を弱みではなく「価値」に変える

自由が丘エリアは、かつて「谷畑中」と呼ばれた肥よくな農地でした。現在も奥沢~九品仏エリアには自然が残り、都市的な住宅地や商業圏と緑が共存しています。

今回の住戸では、そんな土地の二面性を空間に落とし込みました。

共用部はカラフルで開放的な空間。一方、専有部は白と黒を基調とした落ち着きのある空間へ。建物の中で異なる表情を持たせることで、住戸へ入った瞬間に空気感が切り替わるような体験を目指しました。

 
キッチン側LDK Before / After

リビングや寝室といった滞在空間は白く、動線となる廊下は黒く設計しています。トンネルを抜けるように廊下を進むことで、住戸に奥行きと空間の切り替えを生み出しています。

 
廊下 Before / After

築年数を重ねた建物は、新築と同じ条件で競争することが難しくなります。しかし、その建物にしかない特徴や立地の魅力を活かすことで、唯一無二の住まいとして価値を高めることができます。

今回の住戸も単に内装を新しくするのではなく、この場所だからこそ成立する空間つくりを目指しました。

 

最上階の課題に応える、建物に合わせた断熱改修

賃貸住宅を長く運営するうえでは、見た目だけでなく住み心地も重要です。
外周部の壁・天井には断熱材を追加し、窓には窓枠を延長してインナーサッシを設置しました。


インナーサッシを追加した窓

最上階は屋根からの熱の影響を受けやすく、特に夏場は室内環境が課題となることがあります。今回のリノベーションでは築56年の建物が抱える性能面の課題をインナーサッシと断熱材で解決し、現代の暮らしに適応できる住環境へ更新しました。

断熱性能の向上は入居者の快適性向上だけでなく、長期的な物件価値の維持にもつながります。

 

多様な暮らし方を受け入れる住まい

87㎡の広さながら2LDKのゆとりある間取りは、そのまま活かしました。

近年は部屋数を増やしたり、住戸を細分化して戸数を増やしたりする選択肢もあります。しかし本住戸では、広さそのものを魅力として残すことを選択しています。

既存住戸の特徴の一つである、靴を脱ぎ履きするためのスペース(たたき)がない構成もあえて残しました。

 
玄関  Before / After

靴を脱ぐ場所が決まっていないため、玄関前の空間活用に新しい選択肢が生まれます。客間・ワークスペース・ギャラリーといった靴を脱がないスペースとして使うことができます。

もちろん、玄関で靴を脱いで通常のリビングとして使うことも可能です。上足下足の境界を自由に設定できるからこそ、住まい手のさまざまな暮らし方にフィットします。

 
玄関側LDK  Before / After

LDKから廊下にかけては、ポーターズペイントを採用しています。
通常、壁や天井といえばビニールクロス。塗装は賃貸に限らず、日本の住宅においてまだまだ一般的ではありません。しかし、賃貸住宅でも塗装を採用できます。

原状回復時に全て剥がして貼り替えるビニールクロスとは違い、部分的な塗り直し(タッチアップ)ができるのが、賃貸住宅にポーターズペイントを採用する大きなメリットです。壁の傷や汚れに対して過剰な工事をする必要がなくなり、廃棄物もほとんど出ません。

さらに、住まいのバリューアップにつながる特有の質感も魅力の1つです。控えめながら複雑な色彩と包み込むような陰影が、家具や暮らしを引き立てます。

 
LDK  Before / After

画一的な間取りや設備ではなく、住む人自身が暮らし方を選べる余白を持たせることもまた、築年数を重ねた建物だからこそ生み出せる価値の一つです。

 
居室  Before / After

今回の住戸は、広さ・間取り・空間の個性を活かしながら、設備や内装を更新することで、新築にはない魅力を持つ住まいへ生まれ変わりました。

 

建て替えではなくリノベーションという選択

築古物件の活用を考える際「建て替えるべきか、それとも残すべきか」という悩みは少なくありません。プロジェクトサニーでも初期段階で両方を検討し、建て替えではなくリノベーションを選択しました。

その理由はオーナーさまの資産としての価値を引き継ぎながら、将来の相続も見据えた活用ができる可能性があったからです。建て替えによる大きな負債を負うことなく、補助金も活用しながらリノベーションによって時代に合わせた更新ができることからご提案しました。

加えて建物を使い続けながら改修を進められるため、入居者さまの住まいを守りながら資産価値の向上を図れる点も決め手となりました。

NENGOでは、建物の状態だけでなく、オーナーさまの収益状況や今後の運営方針も踏まえながら、最適な活用方法をご提案しています。

住戸1戸のリノベーションから1棟まるごとの再生、建て替えの検討、相続対策まで、それぞれの状況に合わせて一緒に考えます。

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